五感にひびく日本語

中村明 著

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五感にひびく日本語

定価2,420円(本体2,200円)

発売日2019年12月24日

ISBN978-4-7917-7236-0

感じる言葉の辞典。
頭を冷やす、暗い部屋にパッと電灯がついたよう、耳にたこができる、釘をさす、ぷんぷん怒る……。すぐれた比喩は、新しいものの見方を開拓する。日本近代文学の選りすぐりの表現から、ふだんづかいの言い回しまで。その妙味を堪能しながら、日本人のユーモアと想像力のありかへ。

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[目次]

はじめに

第一章 体ことばの慣用句
頭  顔  額  眉  瞼  睫毛 目
瞳  目尻 耳  鼻  口  唇  舌
歯  頰  顎  首  肩  胸  心臓
肝  腹  臍  背  腰  尻  腕
手  指  膝  足  身  骨

第二章 イメージに描く慣用表現
愛嬌がこぼれる
お灸を据える
壁にぶつかる
匙を投げる
箍が弛む
ねじを巻く
腫れ物に触る
家賃が高い

第三章 抽象観念も感覚的に
明暗  色彩  形状  音響  味覚
痛痒  寒暖  乾湿  触感

第四章 喜怒哀楽を体感的に
歓喜  憤怒  悲哀  恐怖  羞恥
恋情  厭悪  興奮  安堵  驚愕

第五章 比喩イメージの花ひらく
光――光の澱        翳――夜の脈搏
色――カーンと冴える    音――音のない音
声――悲しいほど美しい声  黙――艶消しの沈黙
匂――沈んでいた女の匂い  味――ソースをかけた靴
触――空気を濃くする    春――ねっとりとした春
夏――蚊の鳴き声      秋――秋の夕陽に熟れて
冬――下界に舞う風の花   時――海鼠のような現在
命――死を漉して貯める    死――季節の移るよう
一生――まだ一塁じゃないか  空――海を映す鏡
日――血の気も失せて     月――ためらうような光
星――寒気が磨き出す     空気――先祖の霊
風――毛髪を吹きほじる    雲――眼に見える風
霧――胸をキュンと      雨――葱をちぎって放る
雪――大気をおしわける    雷――大気を引き裂く
火――べろべろと       水――月光の滴り
海――真赤な声を潜めて    川――痙攣の発作
山――どてら姿の大親分    木――床屋に行かない頭
花――夢のしたたり      葉――風にほどける
猿――憂鬱そうに空を仰ぐ   犬――選挙のポスター
猫――歯牙にも掛けぬ風情   鼠――給食の時間
象――横文字の新聞      雲雀――空気が蚤に
蛙――ぼろんぼろん      虫――煙のような声
魚――虹のような脱糞     髪――闇が染める
額――むくむくと       睫毛――影を落とす
眼――咲くという眼なざし   耳――あたりが透き徹る
頰――陰気な笑窪       鼻――顔中にはびこる
口――皮がむけて来そう    歯――キラリと
顎――ふくふくと       顔――のっぺらぼう
頸――薄黄色いかげり     肩――鬱陶しい触感
乳――ありがたいふくらみ   腰――牛乳瓶のよう
手――甘やかされ       脚――無防備な膝の裏
肌――とろとろと飴のよう   姿――風に吹かれているような
印象――夜の川        美――詩は小説の息

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[著者]中村明(なかむら・あきら)

1935年9月9日、山形県鶴岡市の生れ。国際基督教大学助手、国立国語研究所室長、成蹊大学教授を経て、母校の早稲田大学教授となり、現在は名誉教授。主著に『比喩表現の理論と分類』(秀英出版)、『日本語レトリックの体系』『日本語文体論』『笑いのセンス』『文の彩り』『吾輩はユーモアである』『語感トレーニング』『日本語のニュアンス練習帳』『日本の一文30選』『ユーモアの極意』『日本語 語感の辞典』『日本の作家 名表現辞典』『日本語 笑いの技法辞典』(岩波書店)、『作家の文体』『名文』『悪文』『文章作法入門』『たのしい日本語学入門』『比喩表現の世界』『小津映画 粋な日本語』『人物表現辞典』(筑摩書房)、『文体論の展開』『日本語の美』『日本語の芸』(明治書院)、『文章をみがく』(NHK出版)、『日本語のおかしみ』『美しい日本語』『日本語の作法』(青土社)、『比喩表現辞典』(角川書店)、『感情表現辞典』『感覚表現辞典』『分類たとえことば表現辞典』『センスをみがく文章上達事典』『日本語 描写の辞典』『音の表現辞典』『文章表現のための辞典活用法』(東京堂出版)、『漢字を正しく使い分ける辞典』(集英社)、『新明解 類語辞典』(三省堂)など。『角川国語新辞典』『集英社国語辞典』編集委員。『日本語 文章・文体・表現事典』(朝倉書店)編集主幹。日本文体論学会代表理事(現在は顧問)、高校国語教科書(明治書院)統括委員などを歴任。