定価2,420円(本体2,200円)
発売日2019年10月24日
ISBN978-4-7917-7223-0
治療でも、訴訟でも、自己啓発でもなく。
職場のパワハラ、メンタルケアと産業保健、過労自殺とうつ病、ライフハックの現場、ワーママのため息。感情が管理され、生が査定される時代。私たちは、グッとこらえたこの心の揺らぎと、どう向き合えばいいのか。毎日の仕事は、社会問題とどうつながっているのか。現代に疲弊する、働く人びとのための社会学。
[目次]
はじめに ――働く人のための感情資本論
第1章 感情という資本 ――職場でコミュニカティブであること
1 はじめに――「倍返しだ!」とは言えない人々
2 「パワーハラスメント」と感情管理
3 ホモ・コミュニカンスの出現
4 むすびに代えて
第2章 メンタルヘルスという投資 ――メンタル不調=リスク=コスト
1 はじめに――人的資源管理の医療化
2 働く人々のメンタルヘルスケアをめぐる専門職
3 メンタルヘルスケアの商品化
4 メンタル不調=リスク=コスト
5 むすびに代えて
第3章 自殺のリスク化と医療化 ――労働者の自殺はいつ、どのようにして「労働災害」になったのか
1 はじめに――「うつ病」の症状としての自殺
2 「業務上疾病」としての自殺
3 労災保険における自殺のリスク化
4 自殺の医療化
5 健康問題としての労働問題――労働者の自殺の医療化を促進するエンジン
6 自殺の医療化、社会保険への接続
7 むすびに代えて
第4章 自殺の意味論 ――労働者の死をめぐる語り
1 はじめに――いかに「鑑定」され、解釈されるか
2 死者の診断と鑑定
3 自殺の医療化と遺族
4 自殺の責任の外在化
5 自殺を病死者ととらえることについて
6 むすびに代えて
第5章 「パワーハラスメント」の社会学 ――「業務」と「うつ病」のフレーム・アナリシス
1 はじめに――「パワーハラスメント」の社会問題化
2 ある「パワハラ」の風景
3 「パワーハラスメント」のフレーム・アナリシス
4 自殺の「動機の語彙」と「うつ病」フレーム
5 自殺の「動機の語彙」の確定
6 むすびに代えて――次世代への影響
第6章 時は金なり、感情も金なり ――ライフハックの現場から
1 はじめに――時間管理の自己目的化
2 ライフハック
3 頭をからっぽにする
4 ライフハックの伝播、ライフハックを介したつながりの創出
5 ライフハックの社会的機能
6 時間管理と感情管理
7 むすびに代えて
第7章 ワーキング・マザーの「長時間労働」 ――「ワーク・ライフ・過労死?」
1 はじめに――働く千手観音
2 ワーキング・マザーの「長時間労働」
3 時間管理と感情管理――回し続けるジャグリング
4 むすびに代えて――「ワーク・ライフ・過労死」を避けるために
あとがき
註/参考文献
[著者]山田陽子(やまだ・ようこ)
神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。現在、広島国際学院大学情報文化学部現代社会学科准教授。専門は社会学(感情社会学、医療社会学、社会学理論)。主著に『「心」をめぐる知のグローバル化と自律的個人像』(学文社、日本社会史学会奨励賞受賞)、共著に『現代文化の社会学 入門』(ミネルヴァ書房)、『いのちとライフコースの社会学』(弘文堂)、Psychosocial health,work and language(Springer)など。