リクルートスーツの社会史

田中里尚 著

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リクルートスーツの社会史

定価3,960円(本体3,600円)

発売日2019年9月26日

ISBN978-4-7917-7206-3

どうして同じものを着るのか。不思議な服装の歴史と起源に迫る。
ある時期、みんな同じような服装で、同じようなカバンを持ち、同じような靴を履いて歩き回る。就職活動を経験したものならば、誰もがこの不思議な装いをしたことがあるだろう。なぜみんなリクルート・スーツを着るのか。起源、歴史、変遷、文化、ジェンダーなど網羅的に分析したとき、その社会的な意義があきらかになる。まったくあたらしい服飾史にして、画期的な社会史。

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【目次】

序 章 リクルートスーツとは何か
「リクルートスーツ」という言葉について/カースケたちの就職活動/研究されるリクルートスーツ/平凡・無個性・画一的/リクルートスーツは変わらない?/いつリクルートスーツは誕生したのか?/私たちがリクルートスーツを着る理由/典型的なリクルートスーツとは?/なぜスーツは面接用に選ばれたか?/リクルートスーツの「社会史」

第1章 「背広」が意味したもの
「ふだんぎ」としての「背広」/意味を担う「背広」/「ふだん着」から「大人」の象徴へ女性と「スーツ」/汎「背広」化する戦後/「背広」の序列の再構築

第2章 学生服からスーツスタイルへ
カレッジマン・スタイルの自由と規律/学生の自由/社会人の規律/業種別選択と複数購入の推奨/「出世」というレトリック/上役の服装観/ビジネス・スーツにおける個性領域/一九六九年の島耕作/「リクルート」という言葉の普及/スーツを選ぶ学生たち/「背広」と「スール」/紺スーツの定着/「ドブネズミ・ルック」の創出/チャコールグレーではなく「紺」/赤いVゾーンの謎

第3章 「女らしさ」とスーツスタイル
社会人に擬態するための「背広」/戦後の女性の社会進出と困難/勤め人女性としてのアイデンティティを投影できる服の探求/面接では何が意識されたか?/『私のBG』の服装的矜持/干刈あがたが描く「職場の花」問題/「キャリア・ウーマン」的服装戦略へ/「キャリア・ウーマン」の服装規定/女性の就職活動ルック

第4章 「リクルート・ファッション」の自由と限界
「清潔」という指針/人物本位の時代/印象操作の重要性の強調/ファッション雑誌の語る面接時の服装/「リクルート・ファッション」と個性/面接官と服装の判断/就職商品への業界の注目/就職開始時期の早期化とツーピース・スーツ/リクルートスーツ≠フレッシュマン?/「リクルート・ファッション」期におけるジェンダー差/女性ファッション雑誌におけるリクルート・ファッション/一九八四年の岸本葉子/女性のリクルート・ファッションの展開/男女雇用機会均等法施行前後のリクルートスーツ/ファッションは力であったか? 

第5章 「権威」をまとうリクルートスーツ
商品化する就職活動的身体/キャリア志向的リクルートスタイルの誕生/バブル崩壊とリクルートスーツ/標準化するタイトスカート/内田智子のリクルートスーツ体験/スーツの日用品化の兆しと就職活動の長期化/参照物の重複と循環/機能的なものと流行のもの/「見られる性」とタイトミニ/パンツスーツの禁忌はいかに解除されたか?/均等法の改正は女性のVゾーンを簡素化させたか?/残る女性性の行方――バッグの場合/一九九九年の藤崎可南子/紺・グレー・黒/自分らしさと黒とパンツスーツ/「見た目」過剰社会の到来/「見た目も大事」から「見た目が大事」/パンプスをめぐる価値観の問題/「女らしさ」をコスプレすること

第6章 「リクルートスーツ」の形成
ソフトスーツの流行と収縮/『面接の達人』の面接用スーツ観/ブリティッシュスタイルへのシフト/重心は上に、という意識/コミュニケーション・ツールとして「リクルートスーツ」/『Men’s Club』の抵抗と妥協/「紺」神話の解体/「黒」の浸潤/『Men’s Club』における「黒」との妥協/IT時代の「就活」と「超常識」の継承不全/「細身志向」と日用品化/細身志向と個性表現/二〇一〇年の山本太郎

第7章 交差するリクルートスーツ
服装自由化のジレンマ/軽装化の不徹底/「中流幻想」の崩壊とリクルートスーツ/「就活」費用の問題への着目/規範の安定――二〇一〇年代の女性スーツ/服から「顔」へ/細身志向の拡大と日用品化との運動/標準の再説――無頓着と過剰の間で/スーツの階梯の再構築/地位体系としてのスーツからの切断/地位体系としてのスーツの構築

終 章 リクルートスーツとは何だったか
「リクルートスーツ」という言葉について/リクルートスーツはなぜ平凡とみなされるのか/なぜリクルートスーツは画一的と言われるのか/「常識」と「清潔」の構造と意味/なぜ不況時にリクルートスーツは変化するのか/メディアが語るリクルートスーツ/根拠の外部性/新卒一括採用とリクルートスーツ

あとがき
参考文献
索引

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[著者] 田中里尚(たなか・のりなお
文化学園大学服飾学部准教授。早稲田大学文学研究科修士課程を修了後、暮らしの手帖社などで編集の仕事に携わりながら、立教大学文学研究科比較文明学専攻にて博士(比較文明学)号を取得。共著に藤田結子ほか編『ファッションで社会学する』(有斐閣、2017)、高野光平・飯田豊・加島卓編『現代文化への社会学』(北樹出版、2018)など。