後期近代の眩暈 新装版

-排除から過剰包摂へ-

ジョック・ヤング 著,木下ちがや、中村好孝、丸山真央 訳

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後期近代の眩暈 新装版

定価3,080円(本体2,800円)

発売日2019年8月23日

ISBN978-4-7917-7209-4

テロリズムへの不安、移民、暴動、厳罰化。

仕事やコミュニティや家族の急速な変化。

セレブリティとワーキングプア――。

『排除型社会』で社会的排除を尖鋭に描いた社会学者が、経済的・社会的な不安定さと剥奪感をもたらす「過剰包摂」の問題を摘出し、新たな政治への理論基盤を提示する。

 

[目次]

謝辞

第1章 境界線を越えて
日常生活の脱埋め込み
他者化の起源
「ひび割れ」の魅惑
後期近代の眩暈
加速装置付き資本主義

第2章 ゆらぐ二項対立ビジョン
曖昧になる境界
過剰包摂――排除から包摂/排除へ
境界線を越える――二重テーゼに抗して
機能上不可欠なアンダークラス
犯罪と差異の狭隘化
グローバル化と一国的、世界的不満の生成

第3章 復讐心の社会学/違犯の犯罪学
転落の怖れ
報酬の焦点の変化
違犯の犯罪学に向けて
セレブリティの台頭
屈辱感と反抗
違犯の充足
排除の屈辱
エッジワーク、存在論的確信とユートピア
縄張り争いから本格戦争へ
境界線を越えるヒップホップ

第4章 カオスと秩序の再編
二一世紀における階級とアイデンティティ
能力主義の衰退
階級構造の捉え方の変化
アイデンティティポリティクスへの転換
文化変容の系譜学
対貧困戦争
貧困のメタ的屈辱

第5章 労働の衰退と不可視化された使用人
労働の求心性は失われつつあるのか
貧困層の労働政策
仕事をつうじた代償的救済
排除された人びとの包摂
福祉――救済から無責任へ
早期のハーレム
不可視の労働者
階級なき社会の不可視な貧困層
罪責感と中産階級の自己中心主義

第6章 社会的包摂と労働をつうじた代償的救済
ニューレイバー――新しい包摂主義
福祉国家――解決ではなく問題
勝利へ意志
もう一息のところで――ニューレーバーの強迫神経症
十代の妊娠に対するモラルパニック
合理性と中産階級
包摂の過誤
構造から主体へ
スティグマ化の等閑視と犯罪化
社会的排除と政治的排除

第7章 境界を超える――風雨吹きすさぶ海岸に
移民の社会的構築
風雨吹きすさぶ海岸線に
入国の二つの様式
二〇年以上前――一九八一年の暴動
犯罪、移民、そして他者の悪魔化
他者化の起源
最終局面――同化のアイロニー
騒乱の起源
ブラッドフォード、オールダム、バーンリーの暴動
補遺――二〇〇五年のフランス暴動

第8章 テロリズムと「反テロ」というテロリズム――悪の凡庸
代理戦争とソビエト連邦の崩壊
オクシデンタリズム
ブッシュ家とサウド家
二つの矛盾――先進国の内と外
対称性と差異
悪の浄化
悪の美化
西洋の論理
アブグレイブの写真
汝の敵をこそ愛せよ
ロンドンのテロ事件と悪の凡庸
他者化の弁証法と悪という難題
怒りの生成と普通であることの蹉跌
他者化にさらに他者化が重ねられる
暴力の召喚
暴力と戦争のメタファー

第9章 排除型コミュニティ
有機的コミュニティ
アードインにおける他者化
暗黒面への転回
コミュニティを特権化する誤謬
仮想現実に足を踏み入れる
スターたち、セレブリティたち
クロノス効果と破綻した物語
コミュニティの脱領域化と仮想世界の台頭
エレベーターの中の別の場所
マルチメディアの誕生と招かれざる客
一般的他者から一般的な別の場所へ
コミュニティから公共圏へ
後期近代のコミュニティ

結論 他の場所への道
肯定的包摂と変形力のある包摂
再分配の政治
新たな包摂の政治に向けて
脱構築のポリティクス
他者化とコミュニティ
不合理なものの追放
合理化、新しいメディア、公共圏
多孔的コミュニティ
超多元主義ととらえどころのない他社
多様性の政治に向けて

訳者あとがき
新装版訳者あとがき
参考文献
索引

 

[著者]
ジョック・ヤング(Jock young)
1942年生まれ。社会学、犯罪学。ケント大学、ニューヨーク市立大学教授。邦訳書に『排除型社会』(洛北出版)。2013年没。

[訳者]
木下ちがや(きのした・ちがや)
1971年生まれ。政治学。明治学院大学国際平和研究所研究員。著書に『「社会を変えよう」といわれたら』(大月書店)ほか。

中村好孝(なかむら・よしたか)
1971年生まれ。社会学。滋賀県立大学人間文化学部講師。共著書に『社会学的想像力のために』(世界思想社)ほか。

丸山真央(まるやま・まさお)
1976年生まれ。社会学。滋賀県立大学人間文化学部教授。著書に『「平成の大合併」の政治社会学』(御茶の水書房)ほか。