定価1,540円(本体1,400円)
発売日2019年7月29日
ISBN978-4-7917-0371-5
稀代の女優・京マチ子
京マチ子とは、“女優”である。ほかにその存在を形容しうることばはない。あるいは京マチ子こそが女優であり、この等式をいまふたび呑み下すためにいくらかの、いくつものことばが費やされなければならない。それは形容ではない。美しさによってすべてを制した女優に手向ける、歴史のためのオードである。
【目次】
■私が出会った人々*44
故旧哀傷・駒井哲郎 / 中村稔
■詩
蝉の庭 / 鈴木一平
■特別掲載
〈小さなスクリーンの美学〉は映画をどう変えるか――第六九回ベルリン国際映画祭に見るドイツ映画 / 瀬川裕司
■今月の作品
小野光貴・白水ま衣・ゆずりはすみれ・ツチヤタカユキ・スズキあおぞら / 選=水無田気流
■われ発見せり
脂肪の塊、「私」と私だったもの。 / 藤嶋陽子
特集*京マチ子――『痴人の愛』『羅生門』『雨月物語』…稀代の女優
■女優との邂逅
京マチ子 肉体の輝き / 川本三郎
女の脆さも靭さも / 中野翠
■夢の女
「痴人の愛」出演にあたつて――谷崎潤一郎先生をお訪ねして / 京マチ子
谷崎の女とは誰か / 四方田犬彦
「美しい国の美しい人」――谷崎潤一郎と京マチ子 / 西野厚志
■対談
京マチ子と日本の女優――戦後日本の肉体 / 北村匡平×長谷正人
■肉体と身体
新時代に肉体を解き放つ――京マチ子の生の重力 / 北村匡平
制御から零れ落ちる過剰さ――京マチ子の身体 / 紙屋牧子
変化(へんげ)する顔、蝶の身体――京マチ子のスター・イメージに見る倒錯的従順さ / 河野真理江
穴の向こう側へ――京マチ子の風刺的身体の発生と変遷に関する試論 / 角尾宣信
■演技論/女優論
女形としての女優――『藤十郎の恋』(一九五五)におけるパフォーマンス / 木下千花
瞬き――京マチ子の演技を細部から読み解く / 板倉史明
女優と踊子――京マチ子と淡島千景をめぐって / 志村三代子
歴史と意志の廃墟――増村保造による京マチ子 / 川崎公平
■いくつもの京マチ子
真砂サバイバル――『羅生門』における「ぐじぐじしたお芝居」とその放棄 / 鷲谷花
『楊貴妃』の声――京マチ子/溝口健二/早坂文雄 / 長門洋平
タバコをくわえたスター女優――小津安二郎『浮草』における京マチ子の存在感 / 伊藤弘了
もともと本当のあたしなんていないんだから――『黒蜥蜴』にみる京マチ子/成熟、超越性、矛盾 / 久保豊
暁の歌を聴け――水木洋子脚本作品における京マチ子 / 大久保清朗
茶の間のコメディエンヌ / 濱田研吾
■京マチ子の理路
京マチ子主要出演映画解題 / 伊藤洋司
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表紙写真 cover photo = お傳地獄 ©KADOKAWA 1960 画像提供:(株)KADOKAWA