分解の哲学

-腐敗と発酵をめぐる思考-

藤原辰史 著

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分解の哲学

定価2,640円(本体2,400円)

発売日2019年6月25日

ISBN978-4-7917-7172-1

おもちゃに変身するゴミ、土に還るロボット、葬送されるクジラ、目に見えない微生物……
わたしたちが生きる世界は新品と廃棄物、生産と消費、生と死のあわいにある豊かさに満ち溢れている。歴史学、文学、生態学から在野の実践知までを横断する、〈食〉を思考するための新しい哲学。

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【目次】

序章 生じつつ壊れる
1 掃除のおじさん
2 属性を失ったものの必要性
3 人間界と自然界のはざまで
4 壊れたものの理念――ナポリの技術
5 機能から切り離された器官

第1章 〈帝国〉の形態――ネグリとハートの「腐敗」概念について
1  隠される腐敗
2  土壌から考える
3 〈帝国〉を描く
4 腐敗を考える
5 分解者としてのマルチチュード
6 歴史に聴く

第2章 積み木の哲学――フレーベルの幼稚園について
1 崩すおもちゃ
2 フレーベルの幼稚園
3 フレーベルの積み木の哲学
4 積み木の無限性
5 育むものとしての人間と植物
6 歌と音
7 食べる分解者たち

第3章 人類の臨界――チャペックの未来小説について
1 「分解世界」と「抗分解世界」
2 『マクロプロス事件』
3 もはや神の未熟児ではなく
4 メチニコフのヨーグルト
5 人類はいつまでもつのか
6 人類の臨界へ―─ロボットの叛乱
7 ロボットと人類の混交
8 労働からの解放による人類の滅亡――『山椒魚戦争』
9 壊しすぎるという問題─―『絶対製造工場』と『クラカチット』
10 ロボットの末裔たち
11 土いじりの生態学
12 チャペックの臨界から跳べ

第4章 屑拾いのマリア――法とくらしのはざまで
1 分解者としての屑拾い
2 明治の「くずひろい」
3 屑の世界の治安と衛生
4 バタヤとルンペン・プロレタリアート
5 ポーランドから蟻の街へ
6 満洲から蟻の街へ
7 「蟻の街」という舞台で
8 恥ずかしさと愉快さ
9 屑を喰う

第5章 葬送の賑わい――生態学史のなかの「分解者」
1 生態系という概念
2 生産者と消費者と分解者
3 「分解者」とは何か
4 「分解者」概念の誕生
5 葬儀屋とリサイクル業者
6 シマウマとサケとクジラの「葬儀」
7 人間の「葬儀」
8 糞のなかの宝石
9 ファーブルの糞虫
10 分解世界としての蛹

第6章 修理の美学――つくろう、ほどく、ほどこす
1 計画的陳腐化
2 減築
3 犁のメンテナンス
4 メンテナンスと愛着
5 金繕い
6 器の「景色」
7 「ほどく」と「むすぶ」
8 「とく」と「とき」

終章 分解の饗宴
1 装置を発酵させる
2 食現象の拡張的考察
3 食い殺すことの祝祭

あとがきにかえて


初出一覧
人名索引

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[著者] 藤原辰史(ふじはら・たつし)

1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史、食の思想史。著書に『ナチス・ドイツの有機農業』(柏書房、2005年→新装版:2012年)、『カブラの冬』(人文書院、2011年)、『ナチスのキッチン』(水声社、2012年→決定版:共和国、2016年)、『稲の大東亜共栄圏』(吉川弘文館、2012年)、『食べること考えること 』(共和国、2014年)『トラクターの世界史』(中公新書、2017年)、『戦争と農業』(集英社インターナショナル新書、2017年)、『給食の歴史』(岩波新書、2018年)、『食べるとはどういうことか』(農山漁村文化協会、2019年)がある。