定価2,420円(本体2,200円)
発売日2019年1月25日
ISBN978-4-7917-7134-9
原子力という〈解けない魔法〉をめぐるもうひとつの科学史
魔法をかけることはできるが、解くことはできない「魔法使いの弟子」。ドイツの詩人ゲーテによるこの物語は、進歩いちじるしい科学技術、とりわけ原子力にたとえられてきた……。科学技術とアイデンティティの関係をユニークな切り口で真摯に描き出す。
【目次】
はじめに
第Ⅰ部 ファウストの末裔——科学は脱魔術なのか?
第1章 原子力をめぐる錬金術物語——想像される科学技術と召喚される魔法の言葉
第2章 「科学者の自由な楽園」が国民に開かれる時——STAP/千里眼/錬金術をめぐる科学と魔術のシンフォニー
第3章 疎外されゆく物理学者たち——加速器から原子力まで
第Ⅱ部 メフィストの誘惑——いつまで「人間」でいられるのか?
第4章 ノイマン博士の異常な愛情——またはマッド・サイエンティストの夢と現実
第5章 恐竜と怪獣と人類のあいだ——恐竜表象の歴史をたどって
第6章 ゴジラが想像/創造する共同体——「属国」としての「科学技術立国」
おわりに
註
[著者] 中尾麻伊香(なかお・まいか)
1982年ドイツキール生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門は科学史・科学文化論。立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員、マックス・プランク科学史研究所ポストドクトラルフェロー、コロンビア大学客員研究員を経て、現在、長崎大学原爆後障害医療研究所助教。単著に『核の誘惑——戦前日本の科学文化と「原子力ユートピア」の出現』(勁草書房、2015年)がある。戦時中の核研究の遺品を追ったドキュメンタリー映画「よみがえる京大サイクロトロン」を制作するなど、多彩な研究活動を展開している。