障害者の傷、介助者の痛み

渡邉琢 著

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障害者の傷、介助者の痛み

定価本体2200円+税

発売日2018年12月11日

ISBN978-4-7917-7122-6

関係性にとまどいながら、つながり続けるために
相模原障害者殺傷事件は社会に何を問いかけたのか。あらためて、いま障害のある人とない人がともに地域で生きていくために何ができるのか。障害者と介助者が互いに傷つきながらも手に手を取り合ってきた現場の歴史をたどりながら、介助と社会の未来に向けて言葉をつむぐ。

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【目次】

はじめに
 

Ⅰ 相模原障害者殺傷事件をめぐって

1 亡くなられた方々は、なぜ地域社会で生きることができなかったのか?
――相模原障害者殺傷事件における社会の責任と課題

はじめに/「社会の責任と課題」を考えること/自己紹介――地域自立生活運動の随伴者として/障害者は施設で暮らすのがあたりまえか?/「障害者がいなくなればいい」という発言に対する社会の責任/なぜ施設入所者が狙われたか/被害者の名前/施設入所者の尊厳/これからの社会の課題(1)/これからの社会の課題(2)――どんな障害のある人でも、地域社会で暮らしていくために

2 障害者地域自立生活支援の現場から思うこと
――あたりまえの尊厳とつながりが奪われないために

はじめに/ある日常の光景から/地域自立生活の発見と実践/津久井やまゆり園にいる方々は本当に施設入所が必要だったのか/日々の実践から政策へ/誰も、被害者にも加害者にもならないために

3 介助者の痛み試論
――直接介助の現場から考える

はじめに/障害者の傷と、支援現場の暴力性/介護者による虐待について/介助者・介護者の痛み/介助者の隷従化1─―介助現場にあらわれる権力関係/介助者の隷従化2─―当事者も介助者も見通しのもてない現場にて/障害者の痛みと介助者の痛みの落ち着きどころを探る

 

Ⅱ 介助者として生きる/働くとはどういうことか

4 「介助者」「介護者」「ヘルパー」「健常者」「支援者」などの呼称をめぐって
――障害者運動のバトンをめぐる一考察

「介助者」について/「介護者」について/「ヘルパー」について/「健常者」について/「支援者」について/おわりに

5 ベーシックインカムがあったら、介助を続けますか?
――介助者・介護者から見たベーシックインカム

6 社会経済的観点からみた障害者介助の意義と課題
――バイク屋から介助職への転職を通して考える

「うまい具合に乗り換えられた口」?――バイク屋から介助職へ/介助・介護という多種多様な人の集まる職場/建設・製造業から医療・介護分野への転換/バイク業界の実情/もちろん介護業界はたいへんだ/障害者介助って……?/「子どもと過ごす時間が増えた」!――介助職をはじめて/介助職のたいへんなところ/介助で食っていけるための条件とは……/まとめ

7 生存と労働をめぐる対立
――障害者ヘルパーの立場から

問題の射程と自己紹介/障害者運動と労働運動――七〇年代の経験より/自立生活運動の進展と介助者の身分保障の変容/対立のゆくえ、つながりの模索
 

Ⅲ 高齢者介護や障害者差別解消法をめぐって

8 障害者介護保障運動から見た『ケアの社会学』
―― 上野千鶴子さんの本について

『ケアの社会学』の評判と違和感/ぼくの立場や日々の活動/もちろん『ケアの社会学』は革新的だ/『ケアの社会学』の要点/『ケアの社会学』の問題点/未完の『ケアの社会学』

9 障害者介護保障運動と高齢者介護の現状
――高齢者介護保障運動の可能性を考える

はじめに/簡単な自己紹介/介護保険制度の問題点――ぼくらから高齢者介護はどう見えているか/高齢者介護保障運動の可能性─―障害者介護保障運動の経験から

10 差別解消法と、共生への道のり
――京都の現場での取り組みより

ある手紙より/差別解消法の成立/差別解消法と各自治体の条例との関係/京都での条例づくり/差別はいかになくなりうるか――これまでの取り組みより(一)/差別はいかになくなりうるか――これまでの取り組みより(二)/地道な歩みと力強い歩み

11 「権利」と「迷惑」の狭間から
――知的障害者ガイドヘルプにおけるとまどいより
 

Ⅳ 奪われたつながりを取り戻すために

12 とまどいと苦難
――相模原の事件のあとに感じること

まっちゃん/とまどい/苦難

13 支援・介助の現場で殺意や暴力と向き合うとき
――社会の秘められた暴力と心的外傷(トラウマ)について

はじめに/「殺意」を感じる現場/嫌われる人たち(?)/支援の葛藤/『心的外傷と回復』について/通常のケア・システムでは及ばない圧倒的な力/両極を揺れ動く人間関係/第三の加害者の力/再演――その都度繰り返し、他者に迷惑をかけること/身体障害者の場合――介護者への転移も含めて/心的外傷の易傷性と障害者/外傷の伝染性――支援者側のサディスティックな感情/「ひとりぼっちじゃないよ」――「つながり」を取り戻していくこと/「だれしも、何ほどかは過去の囚人である」

14 言葉を失うとき
――相模原障害者殺傷事件から二年目に考えること

津久井やまゆり園訪問/「意思疎通がとれない者」とは/言葉を失うとき/言葉は取り戻されるか/津久井やまゆり園入所者たちの今/心的外傷と狭窄(回避)/沈黙の中の残響

 

あとがき

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[著者] 渡邉琢(わたなべ・たく)

1975年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士前期課程修了。2000年、日本自立生活センターに介助者登録。2004年度に同センターに就職。以降、障害者の自立生活運動や介護保障運動に事務局兼介助者として尽力。現在、日本自立生活センター事務局員、NPO法人日本自立生活センター自立支援事業所介助コーディネーター、ピープルファースト京都支援者。 著書に、『介助者たちは、どう生きていくのか』(生活書院、2011年)、共編著に『障害者介助の現場から考える生活と労働』(明石書店、2013年)、共著に『障害者運動のバトンをつなぐ』(生活書院、2016年)がある。