定価2,530円(本体2,300円)
発売日2018年10月19日
ISBN978-4-7917-7107-3
知られざるAI誕生以前の物語
バークリー、ウィーナー、フォン・ノイマン、そしてチューリング……。科学者たちは「人間のように思考できる機械」を夢見て、人間の脳を模したモデルを研究してきた。しかし、なぜ人の脳だったのだろうか。「回路」が似ているから? 働きが近いから? はたしてそれは本当だろうか。そもそも私たちが想像している「人工知能」のイメージは正しいのだろうか。計算機とコンピュータの開発の歴史から「人工知能」のあらたな一面を明らかにする画期的な科学史。
【目次】
序
第1章 雑誌の記事と「機械の脳」
1 はじめに
2 一九五〇年代までの計算機の歴史
3 二〇世紀前半までの脳研究
4 一九三〇年代までの雑誌記事にみられる「脳」という表現
5 一九四〇年代から一九五〇年代の雑誌記事にみられる「脳」表現
第2章 バークリーと巨大頭脳
1 エドモンド・バークリーという人物
2 バークリーと論理学
3 高速計算機と論理の啓蒙計画
4 シャノンとスイッチ回路研究
5 『巨大頭脳︱あるいは考える機械』
6 バークリーによる「ロボット」製作
7 工作キット「サイモン・ハーフ」から「ブレニアック」へ
第3章 サイバネティクス研究者たちと機械・神経系・脳
1 ウィーナーとサイバネティクス
2 「行動、目的、目的論」――一九四三年
3 マカロックとピッツによる神経系のモデル化
4 目的論学会――一九四四〜一九四五年
5 第一回メイシー会議――一九四六年
第4章 フォン・ノイマンと計算機・脳・オートマトン
1 サイバネティクスとフォン・ノイマン
2 フォン・ノイマンと計算機の関わり
3 「EDVACに関する報告書第一草稿」における神経モデル――一九四五年
4 第一回メイシー会議におけるフォン・ノイマン――一九四六年
5 サイバネティクスにおけるフォン・ノイマンの問題設定
6 ヒクソン・シンポジウム――一九四八年
7 イリノイ大学での講義――一九四九年
8 カリフォルニア工科大学での講義――一九五二年
9 『自己増殖オートマトンの理論』――一九五二年
10 『計算機と脳』――一九五六年
第5章 チューリングと機械の知能
1 チューリングと計算機の関わり
2 チューリング機械の実現と機械の知能――一九四五~一九四七年
3 「知能機械」における機械の「組織化」――一九四八年
4 チューリングとマカロック‐ピッツとの比較
5 「模倣ゲーム」と知能の実現――一九五〇年
6 その後のチューリング
第6章 『オートマトン研究』からダートマス会議へ
1 変化してゆく脳と機械の類比
2 ミンスキーとマッカーシー
3 『オートマトン研究』の構想
4 『オートマトン研究』をめぐる研究の問題設定
5 「ダートマス会議」提案書と研究の方向転換
6 ダートマス会議の一〇年後
7 計算機科学の登場
8 AI研究のその後の展開
9 AIブーム、イメージと現実
注
あとがき
事項索引
人名索引
[著者] 杉本舞(すぎもと・まい)
2003年京都大学文学部人文学科卒業。2010年京都大学大学院文学研究科現代文化学専攻科学哲学科学史専修博士後期課程研究指導認定退学。2013年京都大学博士(文学)。現在、関西大学社会学部社会システムデザイン専攻准教授。専門は、科学技術史(20世紀)、コンピューティング史(1930年代~50年代)、黎明期の人工知能研究。共訳著にアラン・チューリング/伊藤和行編『チューリング コンピュータ理論の起源 第1巻』(佐野勝彦との共訳および解説共著、近代科学社、2014年)。論考に「コンピュータと論理が出会ったころ」(『数学セミナー』2014年11月号)、「「ノイマン型コンピュータ」とフォン・ノイマン」(『現代思想』2013年8月増刊号)など多数。