定価1,760円(本体1,600円)
発売日2018年9月20日
ISBN978-4-7917-7103-5
雨の降りはじめた音が耳をうつ 末路といえばすべて末路だ
その〈詩人〉は実在しているのだろうか。インターネットにぽつぽつと流れてくる粒子のようなことばは、記憶と想像力をマテリアルに取り出してみせる。「ユリイカの新人」に選ばれ、毎日歌壇賞を受賞した、SNSでも注目されるいまもっとも新しい詩人の作品を集成。待望の第一詩集。全40篇。
【目次】
*
傘の下で人は
駄目にしてしまった人生
汗かと思った
かいた遺書の数で
死んだ夏をホルマリンに
疲れると人は
季節が運んでくる滅亡の匂い
だれも助からない季節
生きてゆくために
女の引き笑い
*
白い道
街の風景
他人の舌
明るい町
階段
遠い潮騒
顔を上げて
倒れたままで
真空
夏の終りに
悪路の先へ
密室空間
種子
傷を開く
後からぼくは
ぼくの死と等価であるような朝に
いつか訪れる童話
錨
*
眠れなかったよるを
接続されていない時イヤホンは
俺にはなんの経験も
女が死んだそうだ
頭んなかに入ってるものを
ごみ捨てに外へでると
自分が夜道であるという錯覚
破壊された頭でもだいじょうぶな明日
一人暮らしが始まった
外へ出た瞬間に
*
フー・アー・ユー
初出一覧
[著者] 岩倉文也(いわくら・ふみや)
1998年福島県福島市生まれ。2016年頃より歌作、詩作をはじめ、新聞歌壇や詩誌への投稿をはじめる。2018年、「ユリイカの新人」に選ばれる(選=三角みづ紀)。同年、「階段」が『詩と思想』読者投稿欄最優秀作品に選出(選=中村純)。毎日歌壇賞を受賞(選=加藤治郎)。