定価1,980円(本体1,800円)
発売日2018年9月26日
ISBN978-4-7917-7096-0
松浦の紀行文を読むと、単に一個の魅力的な人物というだけではない、アイヌ民族の権利の、力強く、そして説得力ある擁護者としての姿が、文中から立ち現れて来る。(「松浦武四郎北方日誌」(金関寿夫 訳)より)
ーードナルド・キーン
アイヌとの交流なしに未墾の大地は歩き回れなかっただろう。彼らから聞く土地の名を文字にしていったことで、大きな島の地図が出来上がり歴史に組み込まれていく。後に北海道と名付けられるその大地で、松前藩や請負商人に搾取され苦しむ先住民の姿を、松浦武四郎は彼らに寄り添うように描き出している。
ーー奈良美智
アイヌ民族が日本人からどのような立場に置かれていたのか。時の為政者によって当時は出版禁止。アイヌの誠実にして剛毅な生き方を丹念に記録し続けた稀有な日本人によるヒューマンドキュメント。
2019年春、松本潤が松浦武四郎役でNHKドラマ化決定!!
【目次】
解題 松浦武四郎と『近世蝦夷人物誌』 更科源蔵
近世蝦夷人物誌 初編(序文(獨松居士))
初編 巻の上
兄弟の豪勇、兄イコトエ・弟カニクシランケ/副酋長リクニンリキ/三女の困窮、ヤエコエレ婆・ヒルシエ婆・ヤエレシカレめのこ/孝子コトン/オノワンク老人/烈婦モレワシ/小使役トミハセ/呪い師クウシユイ
初編 巻の中
豪傑カニクシアイノ/貞節な女ウエテマツ/酋長ムニトク/貧女チュヒリカ/夫妻の強勇、妻ケウトランケ・夫シリカンケ/正義の人ヤエケシユク/孝子エタキウエン/剛勇の兄弟、ヤエタルコロとトセツコラン/いざりのウエンボ/縊死したエカシヘシ/酋長トンクル/義民レイシヤク
初編 巻の下
孝子サメモン/豪傑ノテカリマ/猟師ブヤツトキ/貧しいエカシテカニ/クワンレキの困窮/石狩の下男たち/酋長エコマ/盲人ニトシロウク/シキシマ、正義の訴え/酋長シトクルランケ
近世蝦夷人物誌 弐編
弐編 巻の上
百歳翁イタキシリ/孝子クメロク/怪童イキツカ/孝子サンソウ/農夫茶右衛門/孝子ウナケシ/いざりのオシルシ/豪勇シンリキ/シテバ・オホン兄弟の孝心
弐編 巻の中
豪勇コタンチシ/オテコマの困窮/彫物師モニオマ/孝女フツモン/酋長メンカクシ/酋長ヘンクカリ/庄屋の酒六と、その弟三五郎/彫物師シタエホリ/下男ドンドン/盲人トルホツパ/孝女サクアン/縊死したフツチウ
弐編 巻の下
鬚のセームツ老人/豪勇イホレサン/切腹したリキサン/孤老モンクシデ/よみがえったヨシン/小使エコツラセ/手のきかぬセシリバ/孝子シロマウク/渡し守市松/酋長マウカアイノ/帰化アイヌの市助/憤死したトンクル
近世蝦夷人物誌 参編
参編 巻の上
孝子イカシアツ/烈女カトワンテ/感心な少年エトメチユイ/トミアンテの困窮/馬丁の治平/孝行娘某(名不詳)/豪勇の金太郎/孝行娘ヌイタレ/孝行息子ヌサオレ/酋長サントアイノ/イヌンヘケの貞節
参編 巻の中
豪傑ハウカアイノ/エコキマの仇討/孝行娘マタンヌ/北蝦夷のオケラ酋長/八十九翁ハウサナクル/酋長シトナ/孝子エイハロ/小使カムイコチヤ/大力ノツイサンとゲドウ/シリコンナの義心/義人シトスコテ/兄弟の譲り合い、ケンルカウスとエラマオイ/孝子トモリキ/酋長ムンケケ/占い者コエルケル/感心な少年ヤエモシユモシユ/酋長センケ/仙人シコツアイノ/孝子シアヌ
参編 巻の下
ラムロクシの義心/大工シハシランクル/古老の爺と婆/孝子シユクフウクル/酋長サケノンクル/豪勇のハフラ酋長
解説 山本命(松浦武四郎記念館)
【著者】
松浦武四郎(まつうら たけしろう)(一八一八年〜一八八八年)
江戸末期の北方探検家。伊勢国一志郡須川村(三重県松阪市小野江町)の郷士松浦桂介の四男。一八四五年(弘化二年)から一八五八年(安政五年)まで六回にわたり、東西蝦夷地(北海道)、北蝦夷地(サハリン)、国後、択捉を探検。和人のアイヌに対する収奪をふくめ、蝦夷地の姿をつたえた。一八六九年(明治二年)に開拓判官となり、北海道名や国郡名を選定したが、政府のアイヌ政策を批判して翌年辞任した。著書に『三航蝦夷日誌』『近世蝦夷人物誌』など多数。
【訳者】
更科源蔵(さらしな げんぞう)
一九〇四年生まれ。アイヌ文化研究家、作家、詩人。
著書に『コタン生物記』(法政大学出版局)、『松浦武四郎 蝦夷への照射』(淡交社)、『更科源蔵詩集』(土曜美術社)など多数。一九八五年没。
吉田豊(よしだ ゆたか)
一九二七年生まれ。作家。著書に『甲陽軍鑑』『武家の家訓』『商家の家訓』(いずれも徳間書店)など多数。二〇一〇年没。