定価4,620円(本体4,200円)
発売日2018年6月23日
ISBN978-4-7917-7075-5
原始的生物バクテリアはいかにしてバッハの創造性を手に入れるに至ったか。
心はいつはじまり、どのように進化してきたのか。現代の科学は心をどこまで解明できるのか。ダーウィニズム、チューリングの計算理論、ミーム学など、あらゆる知を総動員し、あまたの科学者、哲学者たちを悩ませてきた「心の進化」を解明する。哲学者デネットの新たな代表作。
【目次】
はじめに
第Ⅰ部―私たちの世界をさかさまにする
第1章 序論
ジャングルへようこそ
この旅の鳥瞰図
デカルトの傷
デカルトの重力
第2章 バクテリアとバッハの前に
なぜバッハか?
前生物的世界の探求とチェスの類似点
第3章 理由の起源
目的論は死んだのか、復活したのか?
「なぜ」の様々な意味
「なぜ?」の進化―「いかに生じるか?」から「何のために?」へ
前進し数を増やせ
第4章 二つの奇妙な推理の逆転
ダーウィンとチューリングはいかに呪縛を解いたか
存在論と外見的イメージ
エレベーターを自動化する
オークリッジとGOFAIの知的デザイナーたち
第5章 理解の進化
アフォーダンスに向けてデザインされたものとしての動物
志向システムとしての高等動物―理解力の創発
理解力は漸進的に発展する
第Ⅱ部―進化から知的デザインへ
第6章 情報とは何か?
情報時代へようこそ
私たちは意味論的情報をどのように特徴づけられるだろうか?
企業秘密、特許、著作権、そしてバードのビバップへの影響
第7章 ダーウィン空間―幕間として
進化について考える新しい道具
文化進化―ダーウィン空間を逆転させる
第8章 多くの脳から作られている脳
トップダウン式のコンピューターとボトムアップ式の脳
脳の中の競争と同盟
ニューロン・ラバ・シロアリ
脳はいかにしてアフォーダンスを選び出すか?
野生化したニューロン?
第9章 文化進化における語ワーズの役割
語の進化
語に関するさらに詳しい考察
語はいかにして自己複製〔増殖〕するか?
第10章 ミームの目からの視点
語とその他のミーム
ミーム概念の利点
第11章 ミーム概念の難点―反論と答弁
ミームなど存在しない!
ミームは「離散的」かつ「信頼性のある仕方で伝達される」ものだと述べられているが、文化的変化の多くはそのいずれにも当てはまらない
ミームは遺伝子とは違い、遺伝子座をめぐって競合する対立遺伝子をもたない
ミームは、私たちが文化についてすでに知っていることに何も付け足さない
ミーム科学と称するものが予測力をもつことはない
ミームが文化の様々な特徴を説明することはできないが、伝統的社会科学にはそれができる
文化進化はラマルク主義的進化である
第12章 言語の諸起源
「ニワトリが先か、卵が先か」問題
人間の言語へ至る、複数の曲がりくねった
第13章 文化進化の進化
ダーウィン流の出発点
人間のコミュニケーションにおける浮遊理由
思考のための道具を用いる
知的デザインの時代
ピンカー、ワイルド、エジソン、フランケンシュタイン
知的デザインのランドマークとしてのバッハ
人間文化に対して〔自然〕選択を及ぼす環境の進化
第Ⅲ部―私たちの精神を裏返す
第14章 進化したユーザーイリュージョン
開かれた心で心に向き合う
人間の脳が「局所的な」有能性を用いて「大局的な」理解を達成するのはいかにしてか?
私たちの外見的イメージはいかにして私たちにとっての外見となるのか?
私たちはなぜ事物をこのように経験しているのか?
ヒュームの奇妙な推理の逆転
志向的対象としての赤い縞
〈デカルトの重力〉の正体と、それが根強い理由
第15 章 ポスト知インテリジェント的デザインの時代
私たちの理解力の限界はいかなるものか?
「ママ見て、ひとりでできたよ!」
知的行為者の構造
この先私たちに何が生じるか
旅を終え、帰還へ
付録―本書の背景
訳者あとがき
文献表
索引
[著者] ダニエル・C・デネット(Daniel C. Dennett)
1942年生まれ。ハーヴァード大学哲学科卒業、オックスフォード大学院にて博士号を取得。タフツ大学哲学教授、同認知科学研究センター所長。主著に『解明される意識』『ダーウィンの危険な思想』『解明される宗教』『思考の技法』(青土社)、『自由は進化する』『スウィート・ドリームズ』(NTT出版)、『心はどこにあるのか』(ちくま学芸文庫)、『ヒトはなぜ笑うのか』(共著、勁草書房)ほか多数。
[訳者] 木島泰三(きじま・たいぞう)
1969年生まれ。法政大学大学院人文科学研究科哲学専攻単位取得満期退学。現在法政大学非常勤講師。著書に、『主体の論理・概念の倫理』(共著、以文社)、翻訳書に、ダニエル・C・デネット『思考の技法』(共訳、青土社)、キース・E・スタノヴィッチ『現代世界における意思決定と合理性』(太田出版)などがある。