「コミュ障」の社会学

貴戸理恵 著

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「コミュ障」の社会学

定価1,980円(本体1,800円)

発売日2018年4月24日

ISBN978-4-7917-7062-5

治療でも、感情論でも、ハウツーでもなく。
空気を読むのが苦手でも、人とつながって生きていける。不登校やひきこもりに寄り添いながら、学校や職場を支配する「コミュニケーション至上主義」の背景を明らかにする、生きづらさを抱えたみんなのための社会学。

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【目次】

はじめに
 

第Ⅰ部 「コミュ力」時代の生きづらさ

1 若者の対人関係における「コミュ障」
「コミュ力」の時代/「コミュ障」とは何か/大学における「コミュ力のある人」/「エンタテイメントとして人を侮る力」としての「コミュ力」/対人関係をめぐる生きづらさ/「空気」が読めてしまうから生きづらい/異文化と「コミュ力」

2 「生きづらさ」の増殖をどう考えるか――みんなが「当事者」になる時代
「生きづらさ」が増えている/学校のなかの「生きづらさ」/自己責任のリアリティ/それでもつながって生きる知恵を

3 リスク社会と不登校――一九八〇年代の不登校運動から二〇一〇年代の生きづらさへ
はじめに/「学校+企業=社会」/「場」に包摂された生きる息苦しさ/不登校運動の興隆/リスク化・個人化/「生きづらさ」へ

 

第Ⅱ部 「当事者」と「専門家」のあいだで

4 「生きづらい私」とつながる「生きづらい誰か」――「当事者の語り」再考
「問題に取り組む私」から出発する/「ぼくは、もっと怒っていい」/「終わりのない語り」の可能性

5 「学校」の問い直しから「社会」とのかかわりの再考へ――不登校の「その後」をどう語るか
はじめに/「ひきこもりにつながる不登校」の語りづらさ/「当事者」再考/実践と語り/おわりに

6 支援者と当事者のあいだ
「支援者」の揺らぎ/「当事者」・「支援者」が曖昧な「生きづらさ」の現場/「マイノリティとしての当事者」と「関与者としての当事者」/「生きづらさ」支援を考える/おわりに

7 不登校の子どもの「居場所」を運営する人びと――それでも「学校に行かなくていい」と言いつづけるために
はじめに/専門家の言説と不登校の「その後」/調査対象と調査概要/「居場所」を運営する人びと/それでも「学校に行かなくていい」と言いつづけるために/おわりに

 

第Ⅲ部 新たな「社会とのつながり」へ

8 「働かないことが苦しい」という「豊かさ」をめぐって
「働かないことが苦しい」ということ/価値の内面化と「苦しみ」/価値の内面化による「苦しみ」の源流としての不登校/若者就労における「苦しみ」の解除/「シューレ大学」信田風馬の手記から/存在承認と業績承認/「働くこと」の再構想へ

9 「自己」が生まれる場――「生きづらさ」をめぐる自助活動としての居場所と当事者研究
「生きづらい人」にとって「対話」が持つ意味/「づら研」の概要と私の関わり/語りを介した自助活動は何をするのか/何が起こっているのか/変化の条件/「個」を生み出す「場」の重要性

10 不登校からみる共同性の意義――「多様な教育機会確保法案」に寄せて
「いまあるよいもの」を生かす制度化を/フリースクールの意義としての共同性/「共同性の制度化」の困難とその必要性

11 「書くこと」のススメ
「書く」ことで社会とつながる/「書くこと」の三角形/おわりに

12 「当事者」に向き合う「私」とは何か――不登校への「よい対応」とは
「当事者に向き合いたい」という思いとは何か/私の不登校体験/今、親・教師として不登校に向き合うなら

13 家族とコミュニケーション
三歳の不機嫌に寄り添う/家族のコミュニケーション/産後に変わる夫婦の関係/関係は生き続ける/姓が変わるということ/「生きづらさ」と家族

14 「学校不適応でも大丈夫」と言いつづけるために
元不登校の母親が、娘の不登校を考える/オーストラリアで娘が不登校に/娘に付き合い、試行錯誤/学校不適応でも大丈夫、と言いうるために
 

おわりに
参考文献
初出一覧

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[著者] 貴戸理恵(きど りえ)

1978年生まれ。関西学院大学准教授(社会学、「不登校の〈その後〉研究」)。アデレード大学アジア研究学部博士課程修了(Ph.D)。著書に『不登校は終わらない――「選択」の物語から〈当事者〉の語りへ』(新曜社)、『増補 コドモであり続けるためのスキル』(「よりみちパン!セ」、イーストプレス)、『増補 不登校、選んだわけじゃないんだぜ!』(同、常野雄次郎氏との共著)、『女子読みのススメ』(岩波ジュニア新書)、『「コミュニケーション能力がない」と悩むまえに――生きづらさを考える』(岩波ブックレット)など。