その後の震災後文学論

木村朗子 著

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その後の震災後文学論

定価2,200円(本体2,000円)

発売日2018年1月25日

ISBN978-4-7917-7044-1

不安、崇高、憑在論(オントロジー)で読み解く、未来への文学論。
すぎゆく日常のなかで、わたしたちは、震災の何を記憶し、そして何を忘れてしまったのか――。あの日に更新することを余儀なくされた「読み」と「批評」と真摯に向き合い、これからの文学の地平を見通す。

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【目次】

 

序章  『震災後文学論』のあとで
忘却について
震災後文学に引き継がれたもの
読みと批評の更新

第一章 震災後文学とマイノリティ
クィア小説としての震災後文学――沼田真佑『影裏』
非常時の異性愛規範(ヘテロノーマティヴィティ)――垣谷美雨『避難所』
難民化時代の女たち――金原ひとみ『持たざる者』
復興と同調圧力と――吉村萬壱『ボラード病』
排除の物語――津島佑子の最期の小説

第二章 フクシマとは何か
フクシマという問題系
放射能災としてのフクシマ
多和田葉子の震災後文学
食の記憶と伝承

第三章 フクシマからヒロシマ、ナガサキへ
チェルノブイリの物語
政治的トラウマ化の歴史
ヒロシマ、ナガサキの被爆イメージ
『ヒロシマ・モナムール』を読み直す
繁茂する緑
生の被傷性(vulnerability)

第四章 震災から戦争へ
第三世代による戦争の語り
七〇年後のヒロシマ・モナムール
ヒロシマという亡霊
死者を弔う亡霊の方法

第五章 震災後文学の憑在論(hauntology)
はじめに
「喪とメランコリー」批判としての憑在論
舞台の上の幽霊たち
死者の語る物語
震災後の死者の物語

第六章 フクシマ以後の崇高と不安の憑在論
災害というスペクタクル
放射能災の崇高
『シン・ゴジラ』のサブリミナル的効果
不安の文学――いとうせいこう『どんぶらこ』
いくつものフクシマ・モナムール

第七章 放射能災と生のあやうさ
東日本全域非難の可能性
ありえたかもしれない3・11後の世界
プレカリオスな日本
離散と日本語がなくなる未来――岡田利規『地面と床』
難民化の想像力――深田晃司『さようなら』

 

あとがき
初出一覧
作品名索引

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[著者] 木村朗子(きむら・さえこ)

1968年生まれ。津田塾大学学芸学部国際関係学科教授。専門は言語態分析、日本古典文学、日本文化研究、女性学。著書に『恋する物語のホモセクシュアリティ』、『震災後文学論』、『女子大で『源氏物語」を読む』(以上、青土社)、『乳房はだれのものか』(新曜社)、『女たちの平安宮廷』(講談社選書メチエ)。