定価2,860円(本体2,600円)
発売日2018年1月11日
ISBN978-4-7917-7036-6
狂気の真理への勇気
人間の精神は思想・学問・制度・権力にとりまかれてきた。そこから社会制度や医療現場が形づくられるとして、そこで人間と「狂気」とはどのように取り扱われているのだろうか。歴史を透徹したまなざしでとらえかえし、人間の精神と社会との関係を、未来にまで射程をひろげながら思考する。
【目次】
はじめに
Ⅰ
第1章 精神衛生の体制の精神史――一九六九年をめぐって
はじめに
1 「批判」「改革」と「反」「脱」
2 社会防衛の下での医療化
3 精神医療の拡大――学会の改革(一九六九年)
4 精神と心理の統治体制へ
Ⅱ
第2章 過渡期の精神
1 精神病院の始まりと終わり
2 アサイラムとモラルトリートメント
3 「精神分裂病」「統合失調症」概念の解体の射程
4 精神のダイバーシティ、精神のクイアネス
第3章 狂気の哲学史へ向けて――行動の狂気と自閉症・発達障害・精神病圏
1 スキゾフレニーからスキゾイドへ
2 精神の狂気から行動の狂気へ
3 上部構造は下部構造によって決定されている
4 精神病から発達障害へ(?)――自閉症の概念史
5 狂気の行方
第4章 精神と心理の統治
1 平和な国の内戦状態
2 心理学者フーコー
3 精神医学と精神分析の間の心理療法
4 生権力の両極を媒介するもの
5 魂と行動の統治へ
Ⅲ
第5章 人格障害のスペクトラム化
1 「狂人の二つの体制」
2 「正気の仮面」
3 認知療法のゲーム
4 「軽度」なる行動療法
第6章 自閉症のリトルネロへ向けて
1 精神病圏の範囲
2 幼児自閉症の発見(一九四三年)
3 日本における自閉症第一例報告(一九五二年)
Ⅳ
第7章 自殺と狂気――リベラリズムとモラリズムにおける
1 「体感不幸」「体感治安」
2 「自傷のおそれ」――リベラリズムが「躓く」場所
3 「自殺の自由」
4 モラルの執行(enforcement)
第8章 狂気を経験する勇気――木村敏の離人症論に寄せて
1 離人症の教え
2 正常な微睡み、異常な目覚め
3 正常人、離人症者、学者
4 経験する勇気
Ⅴ
第9章 精神病理をめぐる現代思想運動史
1 人間の真実(真理)としての狂気
2 「余計者」と「回収不能者」
3 人間論・狂気論の円環の破れ
4 「世に棲む」
5 自由の正しい使用法
あとがきに代えて――狂気の真理への勇気
注
初出一覧
[著者] 小泉義之(こいずみ・よしゆき)
1954年札幌市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程哲学専攻退学。現在、立命館大学教授。専攻は、哲学・倫理学。主な著書に、『兵士デカルト』(勁草書房)、『弔いの哲学』『生殖の哲学』『ドゥルーズと狂気』(いずれも河出書房新社)、『デカルト哲学』『ドゥルーズの哲学』(講談社)、『生と病の哲学』(青土社)など。共著に『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社)など。訳書にドゥルーズ『意味の論理学』(河出書房新社)などがある。