幻の雑誌が語る戦争

-『月刊毎日』『国際女性』『新生活』『想苑』-

石川巧 著

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幻の雑誌が語る戦争

定価2,860円(本体2,600円)

発売日2017年12月25日

ISBN978-4-7917-7037-3

戦中・戦後を生きた日本人の本音
日本軍は日ならずして全滅に瀕するであろう(尾崎士郎「バタアン残月」)
戦争以来、指導者なるものが無数に出た……指導者とは、常に正しいことだけを言ふ人、……一種の自働人形であると。道徳の破壊者は彼らである。(亀井勝一郎「最も道徳的な人間とは」)
民衆の無智な発言をそのままに許して置いてはやがて島内の秩序は失はれ(る)……神よ一年のあひだ彼等より言葉を奪ひ給へ(石川達三「沈黙の島」)

存在すら知られなかった雑誌『月刊毎日』が発見された。検閲のゆるい占領下北京だからこそ見逃された小説や批評は、意外なほど冷静に現実を直視する文化人の姿を映し出す。
戦後GHQの検閲の実態や、女優・原節子の貴重なエッセーも掲載
附・『月刊毎日』『国際女性』『新生活』総目次

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【目次】

凡例

はじめに

序章 言論統制と紙不足の実態

  0―1 戦前の言論統制
  0―2 占領期におけるGHQの検閲
  0―3 敗戦後の〝紙飢饉〟とセンカ紙ブーム

第1章 幻の外地日本語雑誌『月刊毎日』

  1―1 『月刊毎日』発見の経緯
  1―2 一九四四年の北京における出版物の取締り
       日本占領下の北京/中国における検閲
  1―3 『月刊毎日』創刊号の誌面構成
  1―4 『月刊毎日』の論説記事
  1―5 フィクサーとしての阿部眞之助
  1―6 『月刊毎日』の文芸欄
       創刊号/第一巻第二号/第二巻第一号/尾崎士郎「バタアン残月」/
       第二巻第二号/第二巻第四号/第二巻第五号/第二巻第七号/第二巻第八号
  1―7 女性作家の登用
  1―8 大佛次郎「遅桜」を読む
       「乞食大将」の連載/応答としての「遅桜」
  1―9 石川達三「沈黙の島」を読む
       戦時下における石川達三の言論/寓話としての「沈黙の島」/民衆は愚か者か?
  1―10 『月刊毎日』と中国人作家
  1―11 おわりに

第2章 『国際女性』と谷崎潤一郎

  2―1 『国際女性』の創刊
       未見の号/『国際女性』の執筆陣
  2―2 〝京都〟と〝女性〟
  2―3 顧問としての谷崎潤一郎
       谷崎と検閲/末永姉弟との出遭い/徳丸(末永)時惠の国際的人脈
  2―4 『国際女性』の文芸記事
       谷崎潤一郎/織田作之助
  2―5 女性解放への提言と「姦通」をめぐる議論

第3章 雑誌『新生活』とGHQの検閲

  3―1 『新生活』とはいかなる雑誌か?
  3―2 主要記事の紹介
       敗戦直後のルポルタージュ/四つのテーマ
  3―3 『新生活』の文芸欄と文学者たちの言説
       武田麟太郎の「遺稿」/小説・論/文芸時評/詩・俳句・随筆
  3―4 検閲、そして『風報』へ

第4章 原節子「手帖抄」を読む――雑誌『想苑』

  4―1 はじめに
  4―2 『想苑』について
  4―3 原節子「手帖抄」を読む
  4―4 原節子を貫く心棒

 


補助資料
  『月刊毎日』目次/『国際女性』目次/『新生活』目次

あとがき

初出一覧

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[著者] 石川巧(いしかわ・たくみ)

1963年、秋田県生まれ。現在、立教大学教授。専攻は日本近代文学・文化。著書に『『月刊読売』解題・詳細総目次・執筆者索引』(三人社)、『高度経済成長期の文学』(ひつじ書房)、『「いい文章」ってなんだ―入試作文・小論文の歴史』(ちくま新書)、『「国語」入試の近現代史』(講談社メチエ)、『〈ヤミ市〉文化論』(共著者、ひつじ書房)など。