定価2,420円(本体2,200円)
発売日2017年11月24日
ISBN978-4-7917-7024-3
もしも彼らがそばにいてくれたなら――。
海に囲まれた3つの小さな島で働くことになった3人の新人保健師の成長を、丁寧な聴き取りから描き出す、本格派の研究が登場! 自身もかつて保健師として離島で働いた著者が示すのは、特殊な地域ケアの現場か、それとも超高齢社会の未来図か。
【目次】
序章 小規模離島の新任期保健師
第1章 保健師が島民に分け入るとき
診療所医師を物差しにする/見守る程度の支援/本音を言ってくれるのを期待する/家族間の深い溝/ちょっとした立ち話から/この保健師もどうせすぐ辞めちゃうだろう/「ちょっとお茶していかない?」/敢えて余地を残す/SOSを出せない夫婦に踏み込む/予防できないケースもある/住民から信頼を得る/支え合うことで問題が見えない/「こんなもんか、いけるかも」/噂を鵜呑みにしなくなる/距離感をつかむ/介入の時期の見極め/二つの焦り/冷静に見る/慣れないように、偏らないように/保健師、母親、同僚としての私/どの住民もケアの対象になり得る/個人的に親しい住民の家族/新参者は注視されている/住民からの不信感/歯科衛生士に気づかされる/島外専門職を利用する/一緒に勉強していく/非常勤保健師がロールモデルになる/島外から来る人の視点を活かす/栄養講座に参加者がいない/一年目と二年目/本音を隠す/「仲よさそうに」生活する/狭さのなかの守秘義務/知らないふりをする
第2章 男性保健師の苦悩と決意
「やらされ感」から「やりたい」へ/理学療法士と管理栄養士/一人で事業を実施する/仕事の引き継ぎを意識する/主体性を引き出す/事業計画立案の狙い/教室の目的を理解してもらう/事業計画があることで振り返れる/事業計画に振り回される/「お弁当一緒に食べませんか」/休み時間なら自己責任で/人間として向き合いたい/保健師とは何をする人なのか/事務業務まで引き受ける理由/協力してもらえないという疎外感/事務職との協働へ/専門職という部分を強く出さない/長く勤めれば勤めるほど/保健師のジェンダー差/保健師活動に疲れてしまった/新人から新人へ引き継いで成長できるの?/支援方法が他の保健師と違う/泥沼から脱出できたキッカケ/「こんなに入り込んでいいのかな」/保健所保健師に後押しされる/島で生まれて島で死ぬこと/相手は自分を一分の一で見ている/目指す保健師像
第3章 成長をカタチにするために
住民スタッフからの反発/経験値の差/相談相手を選ぶ/一人で判断しないで持ち帰る/ビジョンを共有する/上司を頼る/事業計画が解決の糸口となる/PDCAサイクルの二周目/漠然とした不安がなくなる/評価に力を入れる/他機関との役割を明文化する/事務職と保健師が一緒になって/研修機会の不平等/保健師連絡会に行きたい/この環境でどう成長できるか/「すごく遅れているんじゃないか」/ファシリテーターが必要/うすうす気付いていた問題
終章 明日に向かって
[著者] 青木さぎ里(あおき・さぎり)
1976年東京都生まれ。自治医科大学看護学部助教。専門は地域看護学。大学卒業後、東京都の離島・青ヶ島に保健師として赴任し、20代を過ごす。その後本土へ戻り、離島やへき地での看護の魅力を看護学生に伝えながら、離島で働く保健師の調査と研究を始める。多くの保健師の元へ繰り返し足を運び、丁寧に聞き取りを続けている。