女房たちの王朝物語論

-『うつほ物語』『源氏物語』『狭衣物語』-

千野裕子 著

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女房たちの王朝物語論

定価2,420円(本体2,200円)

発売日2017年9月21日

ISBN978-4-7917-7011-3

女房とはだれか。王朝物語を支える、高貴な姫君に寄り添う影たち。秘密と誤解と噂こそが、女房を仲立ちに、物語を周縁から突き動かす。女房は物語作者でもあった。この繊細な読み解きの書から、大きな波紋が広がっていく。
――赤坂憲雄

「脇役」の「欲望」が物語を動かす。政治情報、男女の秘密、物語の過去……すべてを握って物語のゆくえを決めるのは主要人物に仕える「女房たち」だった。作者も多くは女房であった王朝物語への新しいアプローチ。
――大塚ひかり

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【目次】
 

序章
 

第Ⅰ部 『うつほ物語』論

第一章 『うつほ物語』の女房たち
はじめに/1 求婚者たちを位置づける者――あて宮求婚譚の場合/2 様々に広がる機能――物語の後半部の女房/おわりに

第二章 「蔵開」「国譲」巻の脇役たち――情報過多の世界の媒介者

はじめに/1 靭負の乳母――仁寿殿女御の戦略/2 典侍――内幕を知る者/3 蔵人これはた――情報戦の鍵を握る若者/おわりに
 

第Ⅱ部 『源氏物語』論

第一章 「中将」と浮舟の母君――物語の”過去”たる正篇
はじめに/1 正篇における「中将」/2 続篇における「中将」/3 浮舟の母君――「中将」の物語の続編/4 母君不在の物語――「過去」を捨てる「中将」/おわりに

第二章 「侍従」「右近」とふたりの女房――女房が示す遠い正篇
はじめに/1 「右近」から「侍従」へ――夕顔物語と浮舟物語/2 若く愚かな乳母子「侍従」/3 堅実な側近「右近」/4 浮舟づきの侍従と右近/5 侍従と右近の動かす物語/6 侍従と右近のその後/おわりに

第三章 「弁」と弁の尼――克服できなかった”過去”
はじめに/1 「弁」と弁の尼/2 秘密を語る「弁」/3 加担しきれない「弁」/おわりに

 

第Ⅲ部 『狭衣物語』論

第一章 飛鳥井女君物語の〈文目〉をなす脇役たち
はじめに/1 情報操作する者――飛鳥井女君の乳母の場合/2 機能しなかった人間関係――道成・道季兄弟の場合/3 「少将」の子とされた遺児/4 見えない〈文目〉/おわりに

第二章 女二宮周辺の女房・女官
はじめに/1 示される情報の違い/2 存在しないはずの手引きの女房/3 「昔物語」という幻想/4 共有されない情報/おわりに

第三章 一品宮物語と『源氏物語』夕霧巻
はじめに/1 噂が成立させる関係/2 「少将」という名の女房/3 嘆く母親/4 ありえないはずだった婚姻/5 文と噂/おわりに

第四章 背中合わせのふたりの皇女と、夕霧としての狭衣
はじめに/1 物語の前提と状況設定/2 女房の不在と女房間の対立/3 女君との交流手段/4 『源氏物語』とのかかわり/おわりに

終章 女房は物語に何をしているか
1 情報の媒介者/2 女房の名/3 物語の引用

 


あとがき

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[著者] 千野裕子(ちの・ゆうこ)

1987年東京都生まれ。学習院大学文学部日本語日本文学科卒業。同大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(日本語日本文学)。学習院大学文学部助教を経て、2017年4月より川村学園女子大学専任講師。専門は中古文学(おもに王朝物語文学)。