反転する漱石 増補新版

石原千秋 著

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反転する漱石 増補新版

定価3,520円(本体3,200円)

発売日2016年9月20日

ISBN978-4-7917-6948-3

今年没後100年、来年生誕150年を控え、堂々の復刊!!
『こころ』『三四郎』『坊つちやん』…。夏目漱石の名作に隠されたコードとは。家、階級、欲望、制度、他者など、多様な視点から解釈を掘り起こす。もはやこの一冊を読まずに漱石論を語ることはできない、必読の名著。復刊に際して「漱石のジェンダー・トラブル」を増補した。

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【目次】

増補新版への序 漱石のジェンダー・トラブル
 

第1部 <家>の文法

『坊つちやん』の山の手
Ⅰ <初め>と<終わり>
Ⅱ 隠された山の手
Ⅲ 制度としての山の手
Ⅳ 江戸つ子の方へ
Ⅴ 清のために
 

イニシエーションの街 『三四郎』
Ⅰ 知識人の街
Ⅱ 記号の街
 

高等教育の中の男たち 『こゝろ』
Ⅰ 高等教育の中の出会い
Ⅱ 交換される慣習(ハビトゥス)
Ⅲ フィクションとしての平等
 

博覧会の世紀へ 『虞美人草』
Ⅰ 『虞美人草』へのスタンス
Ⅱ 死の意味論
Ⅲ 意味としての家
Ⅳ 二〇世紀の祝祭空間
 

語ることの物語 『彼岸過迄』
Ⅰ 手紙/声
Ⅱ 聴くこと
Ⅲ 手紙=文字
Ⅳ 語ること
Ⅴ 「迷路(メーズ)」としての謎/「迷路(メーズ)」としての都市
Ⅵ 「迷路(メーズ)」としての血統
 

階級のある言葉 『行人』
Ⅰ 迷宮としての言葉
Ⅱ 差異としての言葉
Ⅲ 限界としての言葉
Ⅳ 問いかけとしての言葉

 

第2部 <家族>の神話学

鏡の中の『三四郎』
Ⅰ 『三四郎』の語り手/『三四郎』の読者
Ⅱ 彼自身の知らない三四郎
Ⅲ 他者化された欲望
Ⅳ 語られる言葉
 

眼差としての他者 『こゝろ』
Ⅰ 他者としての自己
Ⅱ 他者としてのK
 

『こゝろ』のオイディプス 反転する語り
Ⅰ 転移する語り
Ⅱ 演技としての語り
Ⅲ 葛藤としての語り
Ⅳ 可能性としての語り
 

反=家族小説としての『それから』
Ⅰ ラングとしての<家>
Ⅱ 否定形としての自我
Ⅲ 物語としての過去
Ⅳ 可能性としての物語

言葉の貫通 『それから』の冒頭部を読む
 

第3部 <家庭>の記号学

修身の<家>/記号の<家> 『明暗』
Ⅰ 「家族語」の結末
Ⅱ 修身の<家>
Ⅲ 劇場としての<家庭>
Ⅳ 記号の<家>
 

隱す『明暗』/暴く『明暗』
Ⅰ 見知らぬ人
Ⅱ 見知らぬ手紙
 

<家>の不在
Ⅰ ダブル・バインドの夫婦
Ⅱ 性としての<家>/金銭としての<家>
Ⅲ 女の言説/男の言説
 

劇としての沈黙 『道草』
Ⅰ 対他関係の構造
Ⅱ 気分の現象学
Ⅲ 関係としての病

 


初出一覧
あとがき
増補新版のためのあとがき

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[著者] 石原千秋(いしはら・ちあき)
1955(昭和30)年、東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科博士後期課程中退。同大学文芸学部教授などを経て、現在は早稲田大学教育・総合科学学術院教授(日本近代文学)。徹底したテクスト論の立場から文学の新しい読みの可能性を考究し、夏目漱石から村上春樹まで、国語教科書から国語入試まで、近現代に生成されたテクストを分析した著作を多数著している。近著に『近代という教養 文学が背負った課題』(筑摩選書、2013年)、『生き延びるための作文教室』(河出書房新社、2015年)などがある。