定価2,640円(本体2,400円)
発売日2016年7月22日
ISBN978-4-7917-6943-8
文学史に隠された遺産=亡霊をあざやかによみがえらせる野心的試み
日本文学の核心は「観客」のモダニズム/谷崎はいかに漱石の遺産を相続したか/クィアの演劇的表現/キャラクター小説の源流は「近世」にあり/「批評家」馬琴の画期性/自然主義の「前史」をたどる/ポストモダニズムと新古典主義/伝統をどう評価するか/演劇と小説の相克/旅と情念処理……。
【目次】
序 章 文学史的不安
1 文学史とその分身
2 祝祭と孤独
3 物語と演劇
4 パフォーマンスの時代
5 厄介な遺産
第一章 劇作家としての漱石――モダニズムの行方
A 絵画的想像力
1 観客とモノのモダニズム
2 アナクロニズムの機能
3 情念処理と観客
4 観客としての男性、演技者としての女性
B 演劇的想像力
1 三つの演劇言語
2 『虞美人草』のインスタレーション
3 観客の文学から内面の文学へ
4 思想家と観客
第二章 東洋的前衛――二つの近代の衝突
A 東洋的近世の演劇性
1 逍遥の演劇批判
2 李漁の演劇性と批評性
3 異端の批評
4 戯曲の言語感覚
B 馬琴以降の演劇性と批評性
1 日本文学の「中国化」
2 フィクションの合法化
3 ポスト馬琴の演劇的想像力
4 身体というアポリア
5 声の神話的利用
第三章 恋愛の牢獄、クィアの劇場
A 恋愛の牢獄
1 透谷の演劇批判
2 演劇的人間の牢獄願望
3 囚人の存在論とその盲点
4 円地文子と女性の主体化
5 演劇史の寓話
B クィアの劇場
1 『春琴抄』と盲者の劇場
2 メタ演劇と観客の変容
3 身体のモデリング
4 セクシュアリティと身体
5 東洋的近世の回帰
6 クィアな新古典主義
7 反演劇的小説としての『細雪』
幕 間 逃走路としての演劇――谷崎潤一郎から中上健次へ
第四章 地図製作者たち――紀行文のリアリズムと倫理
A 自然主義の前史
1 地図製作者としての花袋
2 紀行文による武装解除
3 『蒲団』と地図の勝利
4 首都・地方・郊外
5 リアリズムの演習
B 旅の宗教的位相
1 鷗外の演劇的想像力
2 短篇小説の仕事
3 折口信夫と旅する幼い神
4 中世的/近世的
5 島崎藤村の中世回帰
終 章 観客
1 観客の異常化
2 哲学と観客
3 観照から気散じへ
あとがき
人名索引
[著者]福嶋亮大(ふくしま りょうた)
1981年、京都市生まれ。文芸評論家、中国文学者。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、立教大学文学部助教。近世からポストモダンに到る東アジアの社会的文脈を踏まえながら、文学にとどまらず日中のサブカルチャーや演劇など幅広いジャンルで批評活動を展開している。2014年に『復興文化論』(青土社)でサントリー学芸賞受賞。そのほかの著書に『神話が考える』(青土社)。