定価3,740円(本体3,400円)
発売日2011年10月
ISBN978-4-7917-6619-2
今さら「美人画ポスター」でもあるまい 浮世絵を捨て写真を採用し始めたポスターから、幻の東京オリンピック・キャンペーン、そして国威発揚をあおる総力戦体制への編入まで、近代日本ポスターの錯綜の末を徹底して追い、活写する。可能性を信じ広告界の周辺に結集した技術者・職人・アーティストたちの、知られざる白熱のドラマ。力作。◎図版500余点収録
目次
はじめに
ポスターがニューメディアだった。
広告丸の船出
第1部 ポスターは淡白に鑑賞する芸術ではない。メディアだ。
1
女優や芸者の死せる肖像 「美人画ポスター」 批判
大戦ポスター展というイベント
社会派日本画家集団のいち早い行動
「これが即ちポスター様式」 ―― 「単化」 デザインの登場
「単化」 がなぜポスターにふさわしいのか
「単化」 と 「美人画」 の対立構造
2
「商業美術」 と 「単化」 デザイン 美人画ポスターから脱皮せよ
真のポスター時代来る――東京地下鉄道の広告
戦略家濱田増治と 「商業美術」
拡声器としての 『現代商業美術全集』
濱田の戦略、「単化」 と 「モダニズム」
商業美術の定着= 「単化」 の興隆
第2部 転機 : 一九三〇年
雑誌 『広告界』 について
3
「レイアウト」 って何だ?
室田庫造による 「レイアウト」 の紹介
初の専門書 『広告レイアウトの実際』
「レイアウト」 の拡大――学者も注目
アカデミズムと 「広告学」
「レイアウトマン」 という専門職
「レイアウト」 とヨーロッパ前衛
4
文字は広告の主役だ 広告という媒体へのめざめと 「文字」
身近にあった広告と文字
「図案文字」 を学べ! 編集長室田庫造の指導
室田、洋品店の年末セールをプロデュースする
最新の欧米事情を知る――東京高等工芸学校の宮下孝雄
頭を使った 「活字」 広告を――ビジネスマン長岡逸郎
室田、「新しい活字」 による広告推奨に転じる
「文字を描く」 から 「文字を構成する」 へ
5
広告に写真を使え! ヨーロッパ前衛と広告
絵画になりたかった写真
最初期の写真広告、様々な試行錯誤
一九二七年 『広告界』 でのばらばらな見解
『現代商業美術全集』 での明快な宣言
写真広告の生命線レイアウト
朝日国際広告写真展と 「新興写真」
金丸重嶺、広告写真を論じ、太田に写真を提供する
室田、自論の集大成 「レイアウトマンと広告写真」
写真広告にとって大きな五年間
第3部 広告近代化と総力戦
6
迷走する商業広告
街の広告制作者 ― 図案所という現場
勤務図案家という立場
朝日国際広告写真展の功罪――芸術性と実用性
量産された 「単化」 への懐疑
東西の離反、「写実回帰」 と 「デッサンではない構成力」
単化乱造の理由と東西が進んだ道
『広告界』 と 「レイアウト」 のその後
レイアウトをめぐる二面性――先駆者と一般人の乖離
大衆雑誌の広告の実情とコスト高
7
総力戦と広告の現代化
1 一九四〇年 幻の東京オリンピックの周辺の広告
オリンピック招致をめぐる宣伝戦
民間のお祝い商戦 ―― 「笑われてはいけない。」
オリンピック組織委員会の 「宣伝戦」
2 一九三八年、戦時期にむかう広告制作者の意識
「国民精神総動員ポスター」 と広告制作者の自意識
戦後に向けた準備期と捉える広告制作者たち
3 『写真週報』 と広告
『写真週報』 創刊
写真による日本バッシング
「報国」 を売る 「写真広告」 だった 『写真週報』
国家宣伝のかたわらで制作された現代的な広告
終章
あとがき
図版出典