蓮實重彦 著
定価2,420円(本体2,200円)
発売日2008年7月
ISBN978-4-7917-6423-5
映画崩壊前夜の自覚が意識に浮上するのは、その瞬間である。実際、これらのフィルムは、かりに自分 が映画でないのだとしたら、映画など存在しようもないし、そもそも存在する価値すらないと孤独につ ぶやいている。時間空間を超えて反復されるそのつぶやきが聞きとどけられるとき、そのときにのみ、 映画はかろうじて不可視のスクリーンに向けて投影され、映画は映画であるという同語反復を音としては 響かぬ波動としてあたりに行きわたらせる。その投影と波動とを無根拠に肯定する身振り――。