定価4,620円(本体4,200円)
発売日2026年5月26日
ISBN978-4-7917-7791-4
それは、100年後を生きる人々にむけた切実な試みであった――
工場と住宅地をいかに切り離すべきか、関東大震災後の復興をどうするか、郊外を整備することはなぜ必要か……。急激な近代化のなかにあった20世紀初頭の東京には、政治家、行政、住民の思惑と希望とが錯綜するなか、形づくられていく都市の姿があった――。彼らが展開した〈説得的コミュニケーション〉に注目し、日本社会に「都市計画」が根付いた時期を精緻に追いかけ、その意味と影響を考える。俊英によるあたらしい都市論。

[目次]
はじめに
序章 いかにして都市計画は日本社会に導入されたのか
1 現代の「都市」
2 都市計画の近代
3 日本近代の都市計画
第1章 「都市計画」による「都市問題」の解決――都市問題へのアプローチ
1 都市計画はいかに語られてきたか
2 分析視座1―〈説得的コミュニケーション〉への着目
3 分析視座2―「都市」をめぐる概念への着目
4 分析対象
5 本書の射程
6 本書の展開
第2章 「都市」問題の誕生―用途地域制を導いた降灰問題
1 都市問題と用途地域制の歴史的位相
2 都市計画以前の深川
3 「予期せざりし」問題と用途地域制
4 機能分化をめぐる力学
5 小括――用途地域制が生み出した後背地(ヒンターランド)
第3章 「場末」の発見――都市周縁部に対する調査・介入・告発
1 社会学的問いとしての「場末」と「郊外」
2 新聞記者による「場末」の発見
3 都市計画 ・社会政策による「場末」の制御
4 石川栄耀が提案した「コミュニティ」による「場末帯」の解決
5 帝大セツルメントによる「場末」の告発
6 小括――「場末」の地政学
第4章 「都市」がつくる「市民」――学習する新中間層
1 新中間層という都市計画の担い手
2 都市計画法制を求めた政治・経済的背景
3 「都市」概念の普及過程
4 都市計画展覧会はいかなる学びを生み出したか
5 小括――学習する「市民」、循環する知識
第5章 「帝都復興」における「復旧」と「復興」の論理
1 「復興」という問題
2 後藤による「復興」の発明
3 帝都復興審議会における復旧/復興
4 福田徳三の「復興」
5 小括――「帝都復興」という社会変革
第6章 「市民」が担う「復興」――区画整理の公共性
1 区画整理をめぐる「公共性」と「市民」
2 責任主体としての「市民」
3 「市民の自治」の相克
4 小括――「市民」が示した公共性と帝都復興事業の記憶
終章 希薄 な都市像のゆくえ
1 本書の知覚
2 戦間期東京の都市計画をめぐる都市像・時間・空間
3 研究の願望――「計画」都市・東京の分析に向けて
おわりに
あとがき
参考文献
索引

[著者]中川雄大(なかがわ・ゆうだい)
1994年山口県生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。現在、明治大学情報コミュニケーション学部専任講師。専門は都市研究。社会学の観点から、都市計画や建築などを通じた空間形成についての研究を行っている。またコンクリートやアスファルト、緑地をはじめとする都市を構成する物質的な要素についての研究も進めている。主な論文に、「都市計画導入期における「都市」概念の普及過程」『社会学評論』72巻2号(2022年、第9回日本都市社会学会若手奨励賞(論文の部)受賞)、「「場末」を記述する――1910~30年代東京の周縁部に着目して」『関東都市学会年報』23号(2024年、第28号日本都市学会論文賞受賞)、「コンクリートブロック建築の脆弱性を制御する」『社会学評論』76巻2号(2025年)など。