定価4,840円(本体4,400円)
発売日2022年5月25日
ISBN978-4-7917-7473-9
つねに懐疑せよ。哲学をはじめよ——
政治や歴史といった概念と、倫理や刑法といったルールと、生老病死や福祉といった現実と、言葉や文学といったイメージと、予断も間断もなく向き合いつづけてきた哲学者の集大成。「もっと高いもの」を求め、あらゆる根底を疑い、ときに覆そうとしてきたその徹底した思考の軌跡、その全貌がいまここに。

[目次]
はじめに
第Ⅰ部 倫理/善悪
第1章 言葉の停止の問題――アウグスティヌス『告白』第十巻をめぐって
一 言葉を断ち切る言葉
二 記憶の無限性から言葉の無際限性へ
三 忘却と言葉
四 「神」を口にする幸福
第2章 責任の有限性のために
第3章 善なる行為と善なる存在――ヘーゲル『精神現象学』「良心論」に即して
一 行為する良心――善なる行為の相互承認
二 批評する良心――行為をめぐる二元論
三 精神――共同の行為
第4章 動くことと動かされること――アリストテレス「アクラシア」論について
一 知識の所有と知識の使用
二 一般的前提の使用と特殊的前提の所有
三 日常性と道徳性
第5章 生還者の自尊――善の希薄理論のために
一 善の理論と自尊論
二 自尊の場所
三 自尊と絶望
四 無知の場所
第Ⅱ部 政治/経済/歴史
第1章 われわれは大学が何をなしうるか、ということさえわかっていない
オルタナティヴが可能であるはずなのに
塙保己一と和学講談所
二つの不可能事
五つの可能事
再び可能性のアートへ
第2章 脳の協同――ガブリエル・タルド『経済心理学』を導入する
一 文明化の光と影
二 発明と共有
三 富の企業から光の企業へ
第3章 中世身分制研究の批判的検討
一 無限判断論と非人論
二 善意志について――国家公権と非人救済
三 穢れ観念論批判
第4章 『徒然草』の(反)障害学
第5章 田辺元のコミュニズム
一 自由民主主義と社会民主主義
二 「先後の秩序ある平等」
三 無としての共産主義の国
四 種的基体としての福祉国家
第6章 意味の地質学、人類の腫瘍学――『悲しき熱帯』を読む
一 戦後の方法叙説
二 先住民の鏡
三 思考の此方、社会の被方
第Ⅲ部 実存/存在/世界
第1章 存在と実存――「私」と「現」における
一 「私」の存在、「私」の思考
二 『省察』と『存在と時間』
三 被造性と被投制
第2章 直観空間と脳空間――戸坂潤とジル・ドゥルーズ
一 脳理論の幾何学化
二 量的幾何学と質的幾何学
三 双対空間としての直観空間
第3章 リアリズム論争のために――分析哲学のドイツ的総合の惨めさについて
一 あらゆる物を含む物
二 世界の有耶無耶
三 中立性とリアリティ
四 現実の(脱)魔法化
第Ⅳ部 生死/病気/狂気/生殖
第1章 デカルト『省察』における狂気と病気
第2章 刑罰と責任
第3章 自由意志の罪と罰――精神の自由のために
保安処分の躓き
社会防衛論の現在
第4章 保険セールスマンとしてのハイデガー
第5章 疫病下のフーコー――死に照らされた深い革命
一 都市の疫病
二 終末論と個体死
三 人口集団の医学による個人化
四 抵抗と啓蒙
五 主体の霊的な運動
第6章 哲学と病院――フーコーとドゥルーズにおける
一 排除と包摂
二 文学の劇場
三 労使の協定、言葉の範式
四 仮象の共同体
第7章 制作と生殖――西田幾太郎の生命論によせて
第Ⅴ部 文学/言語
第1章 文学の門前
1 なぜ、子供を作るのか――受肉の文学のために
2 村上龍の困難――未来の書法のために
3 薬の戦争――バイオの文学のために
4 誰か死ぬ、私が残る――反復の文学のために
5 愛は世界を救うか――徳の文学のために
6 共同体の腐臭――宗教性の文学のために
7 愚劣なエコノミーに抗して――歓待の文学のために
8 稗史も所詮は歴史である――新世代の文学のために
9 自爆の肯定の彼方へ――行動の文学のために
10 献身とボランティア――生存の文学のために
11 童子アカリの問い――生殖の文学のために
12 先生、ドストエフスキーって誰なんですか?――若者の文学のために
第2章 一九六九年の大江健三郎
一 性的人間の国家化と政治化
二 反‐社会性から非‐社会性へ
三 狂気から健全へ――「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」を読む
第3章 言霊を吹き込む死と子ども
あとがき 哲学のファンダメンタル
初出一覧

[著者]小泉義之(こいずみ・よしゆき)
1954年札幌市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程哲学専攻退学。立命館大学大学院先端総合学術研究科特任教授。専攻は、哲学・倫理学。主な著書に、『兵士デカルト』(勁草書房)、『弔いの哲学』『生殖の哲学』『ドゥルーズと狂気』『ドゥルーズの霊性』(いずれも河出書房新社)、『デカルト哲学』『ドゥルーズの哲学』(いずれも講談社)、『災厄と性愛』『闘争と統治』(いずれも月曜社)、『生と病の哲学』『あたらしい狂気の歴史』『あたかも壊れた世界』(いずれも青土社)など。共著に『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社)、『フーコー研究』(岩波書店)など。訳書にドゥルーズ『意味の論理学』(河出書房新社)、デカルト『方法叙説』(講談社)など。